森晶麿『四季彩のサロメまたは背徳の省察』

四季彩のサロメまたは背徳の省察

四季彩のサロメまたは背徳の省察

 

 学園長の息子として学園全体の中心に位置する華影忍は、同じ朗読部の後輩“カラス”から、ひと月前に出会った女生徒を探してほしいと頼まれる。“歩く女百科全書”を自称する彼にとって難しくない相談のはずだったが、“カラス”から女生徒の特徴を聞くうちに、ありえない事実にたどり着いてしまう。なぜなら彼女、伊能春架は、ひと月前にはこの世にいなかったはずなのだ・・・・・・

 全編とおして、背徳的な香りが漂う作品。正直ここまでそんなシーンを入れる必要があるのかなという気分ではあります。そればかりが強調されてしまって、ひとつの物語の印象を薄めてしまっているように見えます。

 登場人物たちの設定を考えると少々無理がありそうなトリックでしたが、それ以上に心理的な歪みが気になりました。みな朗読部所属ということから「サロメ」の世界観に浸り過ぎてしまっているのかもしれませんが、誰も彼もが歪み過ぎている気がしてなりません。だからこそ、他の方の感想は〈全編エロ〉ってことと〈エピローグ〉にいってしまうことが多いのかな。

 キャラが立った読みやすい作品で、するすると頭に入ってきました。かつて『黒猫の遊歩 あるいは美学講義』が読みにくくて辟易したことがあったのですが、それが懐かしいくらい。もっとも、“歩く女百科全書”華影忍という人物のどこに惹かれるのかだけは、ちっともわかりませんでしたが。

2016年12月23日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ