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明利英司『旧校舎は茜色の迷宮』

review

 高校の人気男性教諭小垣が、旧校舎の窓から転落し亡くなった。そこはちょうど一年前、女性教諭宇津木が殺害された教室。小垣と親しかった秋美は、空手部の渋谷や生徒会長の木吉とともに二人の死の真相を追うが、事件は複雑に絡み合っていく・・・・・・


 第6回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作。
 複雑な人間関係から、好き嫌いが分かれそうな作品。もっとも、優秀作に相応しい青春ミステリの佳作であることは間違いありません。期待していた以上に楽しく読むことができました。
 高校生の少女とその先輩のイケメン二人が、それぞれの思惑から協力して事件の真相を追うという構成。付かず離れずというくらいの微妙な距離感が巧みに表現されています。この距離感が、展開を含めて考えると非常に効果的でした。


 物語の初めから様々な形で仕掛けられた伏線は、終末に至るまでにきれいに回収され、納得の読み応えです。まさかあんなものまで伏線にするとは。
 最後の最後まで様々に仕掛けがありますが、結末に添えられた展開には賛否両論ありそうな気がします。ちょっと付け足したような感じがして、それ以前と馴染んでいないようにも思えます。しかしながら、この部分こそが作品の肝。普段見えにくい人間の心の裏側、闇、あるいは二面性という、作品全体に貫かれたテーマの終着点のようでした。
 人間のいやな部分を描きながらも、ある登場人物の変わらない心は、この物語における一服の清涼剤のように気持ちのよいもの。これがなかったら、もっと後味が悪い作品になっていたのかも。
 作品の扱う内容は決して気持ちのいいものではありませんが、ミステリとして常に次のページが気になり、楽しく読むことができた物語でした。次回作が楽しみな新人作家です。

2014年9月25日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
旧校舎は茜色の迷宮 (講談社ノベルス)

旧校舎は茜色の迷宮 (講談社ノベルス)

 asin:406299027X 旧校舎は茜色の迷宮 [ 明利英司 ]