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松崎有理『就職相談員蛇足軒の生活と意見』

review

 ホラホラ属の分類という特異な研究を続けてきたシーノ。博士号を持っていても役に立たず、就職はうまくいかない。ふと見かけた「秘書募集」の貼り紙に応募してみたところなんと採用されてしまったが、それは「嘘道」なるものの家元の秘書だった。家元には特殊就職相談員としての顔があり、今日も奇妙な人物がやってくる・・・・・・


 おなじみ北の街を舞台した奇妙な短編集。その独特のセンスに脱帽です。もう読んでみて、としか言いようがありません。
 これだけでは感想として成り立たないのでもう少し書くのですが、とにかく不思議な物語です。北の街や社会制度も不思議な感じですが、蛇足軒という人物も不思議、らんちゅうの「いちゃぽん」も不思議、そして作者のセンスがなんとも不思議なのです。
 「いちゃぽん」「嘘道」「ぽにい」なんてネーミングもそうですし、そもそも「嘘道」「百歩七嘘派」「職業安定保証部局」あたりの「それ何?」感はすさまじいものがあります。このあたり、『あがり』のころから変わりありません。


 さて物語はといえば、蛇足軒を訪れてきた特殊な事情を持つ求職者の結末が描かれます。そこにあるのは逆転の発想。その人の特殊事情を活かす斡旋がなかなかおもしろいのです。本当に自分にあった職業、なんて簡単にわかるものではありません。このあたりが、研究職に固執し続けるシーノの目にはどのように映るのか、要注目です。
 なんだか時間がゆったりと流れるようなこの世界、北の街でこれから何が起こるのか。松崎さんの作品は見逃せそうにありません。


収録作:「第一話 懇切、ていねい、秘密厳守」「第二話 かなしき食料難」「第三話 三秒の壁」「第四話 人工の心」「第五話 博士浪人よどこへゆく」

2014年9月3日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
就職相談員蛇足軒の生活と意見

就職相談員蛇足軒の生活と意見

 asin:4041018358 就職相談員蛇足軒の生活と意見 [ 松崎有理 ]