麻耶雄嵩『隻眼の少女』

 死に場所を求め、栖苅村へやってきた大学生の種田静馬。この村で起きた殺人事件で疑われた彼を救ったのは、隻眼の少女探偵・御陵みかげだった。水干姿の彼女は静馬を助手として、父親を犠牲にしながらも事件を解決し村を去った。だが、事件から18年後、惨劇は再び村を襲う・・・・・・


 第64回日本推理作家協会賞、第11回本格ミステリ大賞のW受賞作。
 なんとなくではあるけれど、非常に麻耶雄嵩らしい物語だというのが読了直後の感覚。そうそう、麻耶雄嵩ってこうだよね、と。実験的で斬新、でもクラシカル。
 とにかくノッケからガジェットが山盛り。閉鎖的な村、閉鎖的な一族、首切り殺人、しかもそこに現れた美少女探偵と道具立ては満点。なんだか昔懐かしいタイプの本格ミステリを思い起こさせます。そこからあれよあれよと麻耶ワールドへと誘われていったのです。


 二転三転する推理にはグルグルと翻弄され、転がされたというべきでしょうか。どの推理もその時点では妥当なものに思われ、それが見事にひっくり返されるのですから、読者としてはその都度世界が変わるような感覚でした。
 「不整合」というキーワードをもとに推理していくみかげと静馬ですが、得られた手がかりの真偽がふたりをというかみかげを惑わせ、苦しめます。このあたり、いわゆる「後期クイーン問題」をストレートに扱っていて興味深いものです。


 また、麻耶作品の特徴のひとつと思われる登場人物への厳しさ、容赦のなさというのが今回も目立っていました。いやはや。でも、それがあの結末につながるなんて。
 二部仕立ての構成もバッチリはまって、なるほどと思わされる作品でした。

2013年1月23日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
隻眼の少女

隻眼の少女

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