有川浩『ストーリー・セラー』
本が好きな彼が偶然読んでしまった、彼女が書いた小説。それはとても素晴らしいもので、ほれ込んだ彼は投稿を勧める。人に読まれることにコンプレックスを持っていた彼女がしぶしぶ受け入れた結果、その小説は賞を受け、彼女はたちまち人気作家への道を登っていく。だが、有名になることで数々の問題が発生し・・・・・・
「Side:A」は数年前に『Story Seller』で既読です。ずいぶんひさしぶりに読みましたが、再び泣きそうになりました。さすがとしか言いようがありません。やはりわかっていてもひきつけられるようなインパクトがありました。作家に限らず有名人の周囲にためにならないいろいろな人物がいることは、ワイドショーなどでも知られていることです。しかしながら、小説という形で登場人物たちに思い入れを持って読むと、見知った遠い世界の出来事よりも身近に感じられます。よりインパクトも増しますし、同時に嫌悪感も数割増しです。
一方「Side:B」は、「Side:A」とは反対の立場になります。一言で表現すれば、まあこれもありだなあという感じ。ただし、「Side:A」あってこその「Side:B」です。一筋縄ではいかないような結末も、また心の中にいつまでも余韻を残すのに一役買っています。はたして、どんな真相を見出しますか。
〈書ける側〉と〈読む側〉に位置する夫婦を、異なる形でパラレルワールドのように描いたこの作品。いろいろな問題提起をしているようにも見えます。ただこの関係は、夫婦というものの理想的な形のひとつに違いないでしょう。
関連作:『Story Seller』
- 作者: 有川浩
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/08/20
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