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相沢沙呼 『スキュラ&カリュブディス―死の口吻―』

 少女ばかりが亡くなる奇妙な変死事件が続いた。発見された遺体はまるで狼にでも喰いちぎられたかのようだったが、その表情は恍惚としていたという。事件を調べ始めた高校生・此花ねむりにはひとつの目的があった・・・・・・


 相沢沙呼さんの新作は、今までのイメージとは随分離れた伝奇ジャンルの作品。伝奇、という言葉から想起されるおどろおどろしさ、あるいはグロさはどちらかといえば抑えぎみで、それでいて得体の知れない怪しさは残しされています。このバランスが、先には何があるのか読み進めていくための誘導の役割を果たしているように感じられます。
 その一方で、ねむりをはじめとした少女たちの心理は丁寧に書き出され、やはり『ココロ・ファインダ』や『雨の降る日は学校に行かない』の作者であることが再認識できます。耽美的な百合要素が加えられていますが、決してストーリーと無関係な訳ではなく、それどころか少女の心理を描き出し、事件と結びつけるのに役立っています。
 もっとも、読者を選ぶ作品であることは否定できません。相沢さんの今までの作品のイメージとは大きく変わっていて、それを知らずに手に取れば違和感を抱くことでしょう。そもそも伝奇であったり百合であったりというものを受け入れ難いという層には、受けがよくないと思われます。これは作品の否定ではなく、読者と作品との相性です。
 もしかしたら、今後こういう作風に舵を切っていくのかもしれないと思わせるような作品でした。そう書きながら、ミステリ作品も書いてほしいし、酉乃初の新作も期待してしまうのでした。読者とは何て勝手なのでしょう。

2014年10月24日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
スキュラ&カリュブディス: 死の口吻 (新潮文庫)

スキュラ&カリュブディス: 死の口吻 (新潮文庫)

 スキュラ&カリュブディス [ 相沢沙呼 ]