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恩田陸『雪月花黙示録』

 古きよき伝統を守る“ミヤコ”。この地の行く末を左右する光舎の生徒会長選挙がまもなく行われるとあって、人々は沸いていた。だが、“ミヤコ”には勢力拡大を目論む“帝国主義”や、“伝道者”を名乗る謎の勢力も侵入し、本命視される紫風の妨害を図る。果たして、“ミヤコ”を狙う者とは・・・・・・

 恩田さんの新刊は、異なる発展を遂げたふたつの日本の対立のような構図に、学園ファンタジーと剣豪をぶち込んだかのようです。謎×学園×ハイパーアクションってうまいこというなあ。まさにそんな感じ。おそらく、今まで読んだ恩田作品の中ではもっともはっちゃけているんじゃないでしょうか。
 それでも、“ミヤコ”と“帝国主義”の対立を軸に、世界がキッチリとまとめられているのでとっちらかった感じはなく、それぞれのエピソードを楽しむことができます。
 世界のスケールが大きいだけに、エピソードはいろいろな方向に飛んでいきますが、しっかりと繋がっていて次から次へと読み進めてしまいました。ひとつひとつのエピソードをもっと広げて行ってもよかったのではないかと思うくらい。
 例えば、第三話「夏鑑黄金泡雨(なつかがみしゃんぱんしゃわー)」は美作にある泰山寺での夏合宿に蘇芳が向かう物語ですが、現れるスライム状の巨大な物体を、取り込まれた人々を傷つけないように切り続けるようなストーリー。そこから蘇芳がどのようにして事態を打開していくのかと思いきや、思いもよらないような形に話が転がって、この世界のなんでもありな姿を見せつけられた気分になりました。そんな物語が詰め込まれているのです。
 かつて「恩田作品はいつもどんよりとした曇り空のイメージ」なんて書いたことがありましたが、この作品には明るい蛍光色のイメージも感じました。それは装丁から与えられたものだけではないはず。やはり私も“帝国主義”に浸かっているということなのでしょうか。

2014年2月19日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
雪月花黙示録 (単行本)

雪月花黙示録 (単行本)

 雪月花黙示録 [ 恩田陸 ]