法条遥『404 Not Found』

 目覚めた裕也が目にしたものは、昨日と変わらない部屋、変わらない学校、変わらない友人。だが、ちょっとおかしい。これは昨日も見た光景、昨日の繰り返し。そして、昨日裕也は確かに父が経営する会社のビルの屋上から飛び降りたのだ。ちょうど下にいた翔太を見ながら・・・

 この手のタイムリープものは大好きなのですが、どこかで何かを間違えたというか、もう一歩だった印象で少々残念。
 そもそも、何をきっかけとしていつからいつへタイムリープするのか、という部分をもっと取り上げていれば、時間SFの王道となって個人的にはもっと楽しめたかと思います。ただ、それはほんの序盤だけで、物語の早いうちにそこから逸れてしまい、違った方向へ。やはり王道は作者の書きたいものではないのでしょう。
 代わって別の設定がされていることは、割合早いうちにわかってきます。この展開はちょっと早すぎたかな。その設定故に、作中世界がなんでもありになってしまい、結果としてラストあたりでの意外性やインパクトがやや足りない印象を受けました。たとえ同じ設定だとしても、見せ方で意外性やインパクトを打ち出すことはできたかと思います。
 もっとも、人間の悪意を書くという部分に力を入れていることははっきりわかり、それ相応のいや〜な感じを受けました。これが作者の持ち味かな。ただし、少々浅い感じが否めず、想像しやすいというか表面的な悪意で、この部分にもっと独自性があったらよかったかと。
 後味の悪さや物語世界の設定など、読者を選ぶ要素が多いと作品といえます。きっとこういった作品が大好きという方も多いことでしょう。次作も期待して待ちたいと思います。

2013年5月9日読了 【6点】にほんブログ村 本ブログへ
404 Not Found (講談社ノベルス)

404 Not Found (講談社ノベルス)

404 Not Found [ 法条遙 ]