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古野まほろ『天帝のやどりなれ華館』

 帝都東京へ赴いた修野まり、峰葉実香、柏木照穂の三人。東京駅構内にある東京鉄道ホテルのメゾネット・エリアに宿泊したが、宿泊客のひとりが軀中の穴から血を噴き出して死亡する場面に遭遇。峰葉、柏木は国内外の要人らとともにエリアに隔離されるが、そこで連続殺人が。3人の高校生はこの危機を乗り越えられるか・・・


 タイトルだけはずいぶん以前から発表されていたシリーズ最新作。語り手がまほろから交代しただけで、随分雰囲気が変わったというか読みやすくなったというか。もっとも、その変化は読み手に多少の物足りなさを招いた気がします。『旧訳果実』を「読みにくい」と言ったことがありますが、今となっては。また時系列的にも『果実』と『御矢』のあいだに位置することから、番外編として捉えた方がよいかもしれません。


 どんな無茶も可能にする修野まり嬢が隔離の外に位置したことで、何でもアリな雰囲気が形成されてしまいました。『果実』ではありえなかった妙な安心感というか、隔離されたふたりは足掻いているだけというか。隔離の内と外の両方をうまく使えたらよりスリリングな作品になったのでしょうが、少々もったいない感じがしました。
 また、殺人事件そのものよりも、災厄という危機的状況からの脱出に目が向いてしまった感じもあります。


 ただし、伏線の回収や展開は相変わらず巧み。
 加えて、従来のまほろではない語り手ということで、彼らの内面や心情が浮き彫りになっているのは特筆すべきポイントではないでしょうか。このあたり、次回作以降に活かされて来そうです。まあ、次回作が時系列でどこに位置するのかわかりませんが。


 総じて印象に残ったのは、まほろ不在の大きさということでしょうか。でもおもしろかったです。もし『新訳果実』『華館』『新訳御矢』の順に出版されていたら、新しい読者にとってやさしかったかも。


関連作:『天帝のはしたなき果実』『天帝のつかわせる御矢』『天帝の愛でたまう孤島』『天帝のみぎわなる鳳翔』『天帝のあまかける墓姫

2013年3月28日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
天帝のやどりなれ華館

天帝のやどりなれ華館

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