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水生大海 『かいぶつのまち』

review

 かつての卒業生による脚本で、全国大会に出場することになった橘学院高校演劇部。ところが、演じる「かいぶつのまち」に見立てたかのように、主役を演じる少女の下にはカッターが届けられる。それは、本番前日にも。しかも、部員たちは次々と体調を崩していく。この事態に、「羅針盤」の元メンバーたちは立ち上がった・・・


 あの『少女たちの羅針盤』の続編ということで、どんな具合になるのか期待半分不安半分でしたが、案外オーソドックスな感じがしました。できることならば、『羅針盤』を先に読んでおいたほうがより楽しめるのでは。というよりも、再読しておくべきでした。
 舞台となるのは高校の演劇部。前作を読まれた方にはおなじみの、あの橘学院です。しかしながら、なぜか学園ミステリらしい雰囲気をあまり感じることはありませんでした。確かに舞台は高校なのですが、演劇部というごく狭い範囲に限定されていましたし、日常的な学園生活もないからでしょう。


 最大の見所は、ラスト近くの告発シーン。こういう演出はかなり好き。あの「羅針盤」メンバーらしい仕掛けです。この登場人物ならではというシーンです。これは告発だけではなく、和解の象徴でもあります。でも、事情を知らない周囲の人は置いてきぼりですね。
 ただし、告発する相手があまりに小粒なのと、それが誰なのかミエミエなので全体的な盛り上がりにはイマイチ欠けてしまいました。小粒だからこそ、このような事態を招いたことは否定しませんが、もっと大物であったり、予想外の人物であったりすればさらに盛り上がったことでしょう。そこが少々残念。


 「羅針盤」のメンバーに再会できたのはもちろんですが、この一冊でもしっかり楽しませてもらえたのは嬉しい限り。彼女たちが登場する短編「ムーンウォーク」は未読なので、こちらも山の中から探し出さねば。
 演劇も小説も、どちらも物語を生み出すことに変わりはありません。できることなら、作り手の気持ちがこめられた作品に出会いたいですね。


関連作:『少女たちの羅針盤

2013年10月29日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
かいぶつのまち (光文社文庫)

かいぶつのまち (光文社文庫)

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