山田彩人『幽霊もしらない』

 就職できないまま大学を卒業した康輔。彼が偶然手に入れたのは、人気ミュージシャン広瀬琉奈の詩集だった。ところが、その詩集には霊が憑いており、康輔に指示を始めたのだ。彼女を殺した犯人を探せ、と。成仏するために事件の真相へと動き出した康輔は、やがてイケメン探偵戸川へとたどり着く・・・


 鮎川哲也賞受賞第一作。
 受賞作『眼鏡屋は消えた』と同じ路線の作品。やはり、中途半端にユーモアミステリの要素を取り入れている印象は拭えません。主に康輔と彼に憑いた幽霊とのやりとりがユーモラスな部分なのですが、康輔の思い込みの激しさと他力本願な思考が不快感を募らせるというのはいただけません。
 また、シリーズ探偵戸川に目立った光が当てられないのも残念です。もともと聞き込み中心の地味な探偵ではありますが、今回は前作にも増して地味に見えます。やはり探偵あってこそですから、華を持たせればそれが作品としての魅力に繋がるはずです。


 見せ方が違えば、作品全体がもっと華やかで読み応えのあるものになる気がします。そう思わせてくれる作品だっただけに、少々残念です。


関連作:『眼鏡屋は消えた

2012年10月10日読了 【6点】にほんブログ村 本ブログへ
幽霊もしらない

幽霊もしらない

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