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村山由佳『天翔る』

 学校に居場所を失い、親をも失ったまりも。11歳の彼女が出会ったのは、馬だった。馬とふれあい、その背に跨ることで、傷ついた心を癒していく。やがて彼女の才能は導かれ、牧場を飛び出し、エンデュランスという過酷な競技へと挑む。そこでまりもが手にしたものは・・・


 本当に想像以上でした。
 最近、それまでとはちょっと違った世界へ行っていた村山さんが、再び元の場所へ帰ってきたかのようです。しかもパワーアップして。黒と白なら間違いなく白。


 なんと言っても印象深いのは、まりもを囲む人々のやさしさです。志渡も貴子も漆原も、それぞれの立場からそれぞれのやり方でまりもを支え、助けていきます。そのやさしさ、あたたかさは我がことのようにうれしいものでした。
 強さと弱さの両面を持つ健気な少女・まりもも魅力的です。才能には恵まれていたものの、けっして特別なだけではない、子どもらしい一面があり、何より前向きな少女です。きっと神様はこういう人に味方するのでしょうね。


 また、エンデュランスの競技の場面は圧巻の一言。大自然の怖さ、乗り手の持久力、馬との信頼関係。苛酷であるとともにそれこそが人を惹きつける要素で、競技の魅力として見事に表現されています。
 魅力が凝縮されたこの作品をきっかけに、エンデュランスという競技が日本に根付いてほしいものです。いや、時間はかかってもきっと根付いていくことでしょう。それだけの力を、この小説が示してくれました。


 そして、何かに行き詰っている人の背中をそっと押してくれるような一冊に違いありません。どうぞ、読み逃されることがないように。おすすめです。

2013年2月28日読了 【9点】にほんブログ村 本ブログへ
天翔る

天翔る

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