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E・C・R・ロラック『悪魔と警視庁』

 霧のロンドン、仮装舞踏会の夜、メフィストフェレスに扮した男が殺害された。被害者は翌朝、あろうことか警視庁に泊めたマクドナルド主席警部の車から発見されたのだ。当夜の会場にはメフィストフェレスに仮装したものは数名おり、必死の捜査にもかかわらず被害者の名前すらわからなかった・・・


 40年ほど前のミステリが話題になっていますが、こちらは75年前のミステリ。1938年発表という作品です。
 帯には、「クリスティに比肩する英国探偵小説黄金期もう一人の女王」という惹句。これを読まずにいられようか、というところです。クリスティ、読んだことないですが。
 そもそも、翻訳ミステリそのものに縁遠かった私にとって、この黄金期がどういうものなのかもわかりません。そんなところから読み始めたのです。
 いきなり登場する大胆かつ魅力的な謎。警視庁の主席警部の車に死体が乗っていたなんて。そんなところから一気に引き込まれました。


 マクドナルド主席警部が聴取する相手は必ずと言っていいほど何かを隠し、事の真相を濃い霧の中へ消し去ってしまおうとしているかのよう。それは自身の経歴であったり、見聞きした出来事であったり、あるいは直接的に犯人まで。誰もが怪しい。このあたりの小出しにする出し方がなかなか巧みで、ヤキモキさせられながら先へとページを繰ることになります。
 マクドナルド主席警部はロラック作品の中で多く起用されていたシリーズ探偵ということで、しかもこの『悪魔と警視庁』はその中期の作品だったらしく、マクドナルド自身についての描写は決して多いとはいえません。しかしながら、見えない部分が多いからこそ、彼自身が魅力的な人物のように感じられます。
 途中で若干盛り上がりに書けるようにも見えましたが、これは十分に許容範囲。むしろ、マクドナルドの丁寧で紳士的な捜査が味わえるというものです。


 東京創元社からは続いて『bats in the balfry』が翻訳されるようですが、こちらは1937年の作品とさらに1年前です。これも期待していいのかなと思っています。

2013年4月17日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ

悪魔と警視庁 (創元推理文庫)
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書評

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