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中町信『模倣の殺意』

review

 7月7日午後7時、推理作家の坂井正夫が服毒死した。自殺とされたが、編集者の中田秋子は不審に思い、独自に調査を始めた。これとは別に、ライターの津久見は記事の取材として坂井の死を探り出した。浮かび上がってきたのは、坂井による盗作疑惑だった・・・


 死後数年、なぜかこの時期に突如として売れている作品です。
 もともと40年前の作品だけに、描写や文章に古臭さは否めず、読者を選ぶかもしれません。しかしながら、それによって作品の評価が下がることはありません。大胆かつ緻密に書かれたトリックは、時の流れを経ても色褪せない輝きを放っています。マニアにとっては堪らない作品です。
 秋子と津久見、ふたりが別々に坂井正夫の死を追う形。今ならなんてことない話、トリックかもしれませんが、これが40年前となるとどんな反応で迎えられたのでしょうか。なかなか受け入れられなかったのかなあ。もっとも、何度も改名を繰り返し版元を変えながらも出版され続けたのは、正当な評価がされたからとも言えるでしょう。
 ワンアイデアとも見えるトリックを成立させるためのミスディレクションがしっかりしています。たとえ読書中にトリックが想像できたとしても、いざ真相が明らかになった時には満足できるのではないでしょうか。


 いわゆるビッグネームは、数々の名作が時代に関係なく新しい読者を開拓しています。その陰で、埋もれてしまった名作もたくさんあるはずです。たとえ古くても、いいものはいい。そんな作品をどんどん紹介してほしいものです。

2013年3月18日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
模倣の殺意 (創元推理文庫)

模倣の殺意 (創元推理文庫)

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