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乾くるみ『蒼林堂古書店へようこそ』

review

 かつてエリート公務員として活躍していた林雅賀。彼は副業が問題になったことから故郷へ戻り、古書店“蒼林堂”を開いた。繰り広げられるのは、常連たちとのミステリ談義。なぜなら、ここはミステリ専門の古書店であり、彼がしていた副業とはミステリ関係のライターだったのだ・・・


 「本とも」2009年1月号から2010年2月号に掲載された短編14作をまとめた連作短編集。文庫オリジナル。
 大ヒットした『イニシエーション・ラブ』ぐらいでしか乾くるみを知らない方にとっては、全く想定外であろう作品集。イメージの違いに戸惑う方も多いのでは?
 14作を収めた日常の謎短編集ではあるのですが、ミステリとしてははっきり言って小粒。本当にあってもおかしくないような日常の謎だけに、大げさな真相が待っているというわけではありません。いかにも現実的。


 ただし、この作品集の優れている点は、読者を過去のミステリの世界に引きずりこんでいるところ。ガイドブックのような側面に他なりません。ひとつが気になれば、芋づる的に他の作品も読みたくなる。そんな紹介の仕方で、私たちを古くて新しいミステリの世界へ誘ってくれます。
 もちろん、ミステリ好きの読者にとって、蒼林堂はパラダイスのようなシチュエーション。好きなものに囲まれて、同好の士と語らう。そこには一杯の香り高き珈琲。彼らの足が毎週蒼林堂へ向くのももっともなことです。


収録作:「秘密結社の集い」「アルプスの朝陽」「都市伝説の恐怖」「マネキンの足跡」「通知表と教科書」「臨光寺池の魔物」「転居通知と名刺」「鉄道模型の車庫」「謎の冷蔵庫メモ」「亡き者を偲ぶ日」「楽天的な愛猫家」「塔に住む魔術師」「転送メールの罠」「解読された奇跡」 

2012年2月26日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
蒼林堂古書店へようこそ (徳間文庫)

蒼林堂古書店へようこそ (徳間文庫)