分水嶺『フラ×ソロ 〜健全な男女交際についてのあれこれ〜』

 「ソロリティ」と名乗る女子クラブが支配する高校・聖黎学園。その圧倒的な勢力差から学園内は女尊男卑であり、男子クラブの「フラタニティ」は常に虐げられてきた。だが、生徒会長の天上院神楽が「フラタニティ」の解散を公約に掲げたことで、〈シェイクスピア遣い〉七夜哉夜はひとり立ち上がった・・・


 第3回BOX-AiR新人賞受賞作、初出は「BOX-AiR」2、4、5、6、8、9号。
 “男の子って奴は誰だって『主人公』。一人一人が『物語』の『ヒーロー』なんだよ。”(P98)
 なるほど、これはうまいことをいうものですね。考えてみると、この物語の主人公七夜哉夜は、自分の『物語』の『主人公』であるのと同時に、登場人物たちの『物語』の『救世主』だったのでしょう。少なくとも、結果としてはそういう形になっていました。


 〈シェイクスピア遣い〉という二つ名のとおり、彼は爽やかな弁舌と嘘八百を巧みに使いこなし、あれよあれよと女子生徒を攻略していきます。その語りはテンポよく、時に小粋に、時に笑いを誘います。登場する女子生徒はもちろん、読み手を引き込むこと請け合いなのです。いきいきと描かれた登場人物たちはとても魅力的に見えます。
 「フラタニティ」と「ソロリティ」の対決に見せかけたこの物語、七夜哉夜が『ヒーロー』としてこの自分と周囲の『物語』をどう展開させるのか、続きが読みたくなりました。

2012年2月24日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
フラ×ソロ~健全な男女交際についてのあれこれ~ (講談社BOX)

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