千澤のり子『シンフォニック・ロスト』

 三年生の工藤麻衣子に憧れていた泉正博は、引退していく彼女の嘲りを耳にし、見返すべくホルンの練習に精を出していた。だが、成果は出ずにソロの担当を彼女に譲ることになってしまう。しかし。その晩彼女は変死、部内恋愛していたことがわかり、吹奏楽部に伝わる「部内カップルのどちらかが死ぬ」という噂が浮上して・・・

シンフォニック・ロスト (講談社ノベルス)

シンフォニック・ロスト (講談社ノベルス)

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 何ひとつ疑うことなく最後まで読んでしまった、再読必至のミステリ。
 憧れの先輩の心無い言葉を聞いてしまうというショッキングなシーンな幕開けのこのミステリ、吹奏楽部の噂と同じようにひとりまたひとりと交際中の部員が死んでいくところから、あっと驚く方向へと連れて行かれてしまいました。勝因は、この複雑な構成をしっかりと操ったことでしょうか。
 ただ、その複雑な構成は読者からすると少し過剰で、本当に二読、三読しないと全体像を把握できないような気がしてなりません。それを強いるという面だけを考えれば、読者にやさしくない小説とも言えるでしょう。


 もっとも、リーダビリティは高く、、いつしかミステリとしてよりも青春小説を読む気分で先へとページを捲っていました。無論、最後にはミステリを読んでいたという現実に引き戻されたのですが、それこそ作者の術中に嵌っていたということでしょう。
 機会があればもう一度丁寧に読んで、物語の構造を確認したいところです。

2012年1月21日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ