古野まほろ『天帝のはしたなき果実』

 時は1990年代、日本帝国は勁草館高校で連続して殺人事件が起きた。第一の被害者となった生徒会長の奥平は、ある暗号の解読に近づいていたようだが、首なしで発見された。傍らに残されていたメッセージには「天帝」という言葉が。これはまほろたち吹奏楽部の「天帝のはしたなき果実」という曲に関係があるのか。やがて・・・


 第35回メフィスト賞受賞作。弁当箱サイズです。〈新訳〉文庫も出ましたが、今回読んだのはなぜか〈旧訳〉ノベルス。まあ、もの好きです。
 内容をごく単純に言えば、高校を舞台にした連続殺人事件。ただ、それだけでは終わらないのがメフィスト賞、そして古野まほろだったりします。
 どの殺人も、トリックよりもロジックに力が入れられていて、それも半端なものではありません。若干どころか、かなり詰め込みすぎな印象ですが、そのてんこ盛り具合が読み手の心を躍らせてくれます。
 また、後半に盛りこもれた推理合戦もなかなかおもしろく読むことができました。この辺もロジックが強く打ち出されています。


 もっとも、読みにくいという唯一最大の欠点があります。いたるところに散りばめられた過剰とも思えるルビ、あるいはやたらと盛り込まれる独特の言葉遣い。内容はおもしろく、どんどん先に進みたくなるのに、それをまるで足止めさせるかのようでした。まあ、これがあるのがいいというファンも少なからずいそうです。
 ということで、読みにくいことを除けばとても楽しく読むことができ、オススメ!と声高らかに宣言したいところですが、それはなかなか難しい作品です。なぜなら、合わない人が壁に放り投げても何も言い返せないような作品ですから。小声でオススメします。

2011年12月16日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス)

天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス)

 asin:4061824775