有栖川有栖『闇の喇叭』

 探偵行為が禁じられた日本は、2つの国家に分断された。両親ともに探偵だった空閑純は、母の行方は知れず、母の実家に父と身を潜めている。ある日町で男性の全裸死体が見つかり、町中騒ぎに。しかも、純の友人景以子の母が事件への関与を疑われているらしい・・・


 いわゆるパラレルワールドの日本のお話。米ソによって国家が分断され、北のスパイが暗躍するなんていかにもあの半島を思い浮かべますが、それはそれ。ポイントは、警察以外による探偵行為が禁止され取り締まりの対象になっているところにあります。
 探偵行為が禁止されているということは、素人探偵の出番がないか違法な探偵行為に及ぶかのいずれかですが、今回は後者。そこで語られるのは家族、親子の絆でしょうか。いなくなった母親とのつながりを求め、結果として親と同じ探偵行為に及ぶ純の気持ちを想像すると、心が痛くなりそうです。


 上述したような不自由な状況下ですから、作品全体の雰囲気は暗く、重苦しさが漂います。親子の絆はともかくとして、この雰囲気が「ミステリーYA!」として若い世代の読書世界を広げることに向いていたのか少々疑問です。まあ、明るいものばかりがいいのではありませんし、そもそも人の死を扱うようなミステリですからこういう雰囲気のものも当然アリなのですが。
 親が子に教えるかのように、トリックもわかりやすく説明されており、このあたりはいかにも読者層に配慮しましたという感じ。有栖川さんこういうの好きだなあ、と思わされるようなトリックでした。


 とりあえず先へ続くようなラストシーンでしたし、実際『真夜中の探偵』という続編もすでに刊行されています。今回残された謎がどのような形で解決するのか、それともまだ先へ続くのか、楽しみです。

2011年11月19日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
闇の喇叭 (ミステリーYA!)

闇の喇叭 (ミステリーYA!)

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