山口芳宏『妖精島の殺人』
突如失踪した片想いの相手真希を追い、竹原島へ渡った柳沢。そこで見たものは、消え失せた街と妖精の世界の出現、そして真希の・・・。話を聞いた森崎は真野原とともにことの真相を確かめることとなった。菜緒子とふたり島に渡った森崎は、やがて島の所有者郷原一族の惨劇を目の当たりにすることに・・・
『雲上都市の大冒険』『豪華客船エリス号の大冒険』に登場した真野原玄志郎の孫が活躍する探偵小説。ノベルス上下巻組みという大作ですが、そのボリュームを苦にすることもなくたのしく読了できました。この世界に引き込まれました。
若干冗長に見えなくもないのですが、そういった部分がまたたのしく、世界をより厚くしていたように感じられます。
妖精島という舞台に相応しい幻想的な謎が提示され、そのトリックは極めて大掛かり。そういう意味でもスケールが大きく、本格ミステリらしい本格ミステリです。それを見事に描き切っています。真野原の祖父が活躍するシリーズはタイトル通り冒険小説色が強いのですが、対してこちらは本格ミステリ色が強い作品です。シチュエーションやトリックだけでなく、その解決も読者を飽きさせない作りになっており、十分に満喫させてもらいました。
欲を言えば、丁寧すぎるのか事件への導入部が少々長い点が気になったでしょうか。いや、いい焦らしなのかもしれません。
つづく『学園島の殺人』でもきっと真野原が大活躍するのでしょう。そちらも早く読まねば。
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