北山猛邦『私たちが星座を盗んだ理由』
作者初のノン・シリーズ短編集。その残酷な衝撃と先が知りたくなる余韻を・・・
●「恋煩い」
朝、ホームで見かける先輩に片想いのアキ。トーコから片想いに効くおまじないを教えられ、こっそりやってみた・・・全編読み通して振り返ると、もっともミステリっぽいかも。あれを使っているから感じたのかな。ことごとくあれだものなあ。
●「妖精の学校」
目覚めると、「妖精の学校」と呼ばれるところにいた。過去を失くし、ヒバリという名を与えられた僕は、みんなと妖精になる・・・一見ファンタジックな物語が、真相に気付いた時に全然別のものに見えてくる。我に帰るって感じでしょうか。一粒で二度おいしいような作品。一筋縄ではいかないところです。
●「嘘つき紳士」
借金まみれの俺は、拾った携帯電話で振り込め詐欺を試みた。相手は、持ち主と遠距離恋愛中の彼女・・・もちろんうまくいくはずがないとは思いましたが、ちょっと予想とは違う方向へ進んだ感じ。後味の悪さがなんとも言えません。東京って・・・
●「終の童話」
村は石喰いに襲われ、大勢が石化されてしまった。ウィミィを育ててくれたエリナもそのひとり。やがて村には異国の男が現れ・・・これはせつない。最後をどう受け取るか。それによって見えてくるものが違うのではないでしょうか。
●「私たちが星座を盗んだ理由」
看護師の姫子は、再会した夕兄ちゃんに、子どもの頃亡くなった姉の前で首飾り座を消した時のことを尋ねた・・・ああ、これもなんともせつないなあ。ただ、このラストがほしかったのか、少々疑問に感じてしまいます。
小粒ではありますが、粒揃いの短編集。
最後の最後で突き付けられる強い衝撃。そのほろ苦い味わいが、いつまでも尾を引くようなものが並びました。
いかにも現代日本というものからまるで童話のようなファンタジックなものまで、その舞台や人物は異なりますが、同じ趣向で揃えられた作品群だけに違和感はありません。
最後に受ける衝撃のあとどう続くのか、どんな行動をとるのか知りたくなる、そんな気分です。いちばんそういった思いが強いのは「終の童話」でした。まさにリドルストーリーです。
収録作:「恋煩い」「妖精の学校」「嘘つき紳士」「終の童話」「私たちが星座を盗んだ理由」
- 作者: 北山猛邦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/03/08
- メディア: 新書
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