大崎梢『キミは知らない』

 悠奈の父は12年前、外泊先の火事で亡くなった。その父の手帳を見せたところ、非常勤講師の津田は高校を辞め、実家に帰ってしまう。悠奈は宅配便の伝票をもとに、津田を追いかけた。たどりついた田舎町で彼女が見たものは、穏やかで冴えない講師とは別人のような姿の津田だった。彼は、この町は父の何を知っているのか・・・


 これぞ巻き込まれ型サスペンス、という展開です。
 やってきてしまった田舎町から母のもとに帰りたいと願う悠奈ですが、強引に拉致されたり、あるいは言葉巧みに誘導されたりと、様々な形でそれを許してもらえません。話はどんどん大きくなり、思いもよらない所で思いもよらない扱いを受けることになります。
 あれよあれよという間に変化する周囲の状況に、悠奈は翻弄され戸惑う余裕もないほど。誰が味方で誰が敵なのか、誰の言葉を信じればいいのか。本当に人間不信になってしまいそうな状況でしたが、この展開が速くおもしろいので、次が気になって仕方ありませんでした。テンポよく進んで読みやすかったです。


 その一方で、悠奈の行動はあまりに不用心かつ迂闊で、配慮が足りないように見えます。巻き込まれたというよりも、わざわざ囮のように巻き込まれに行ったかのよう。高校二年にしては行動が少々子供っぽく映りました。


 作品世界が持っている雰囲気が、何となく少女漫画あるいは少女小説の世界のよう。そこが気になる人にはちょっと抵抗があるかもしれません。そんなこと気にせずに読んでほしい作品ではあります。大崎さんの作品はいくつか読んできましたが、成風堂書店のシリーズとかよりもこういったノンシリーズものの方が好きかなあ。

2011年9月17日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
キミは知らない

キミは知らない

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