福田和代『迎撃せよ』

 北方の国での発射実験によるミサイルが日本上空を通過した日、岐阜基地F-2戦闘機が何者かに奪われた。犯人は発射実験を仲間の仕業とし、戦闘機に積んだミサイルを国内の主要都市に発射すると警告してくる。犯人に心当たりのある安濃は、基地を抜け出した・・・


 ミサイル発射実験と東アジア情勢の混乱に戦闘機強奪という、やたら世界が大きくなりそうな雰囲気を漂わせた書き出しでした。
 おもしろくはあるもののそれがこじんまりとしていて、少々期待とは違うものでした。
 物語はミサイルの発射実験から安濃の単独行動、そしてクライマックスへとスリリングな展開を見せてくれます。視点の切り替えが多いのですが、それでもわかりにくいということはなく、むしろ適度なスピード感を生み出してくれます。


 しかしながら、物語が狭い世界の中で終わってしまって、どこか尻切れトンボのような印象は拭えませんでした。
 扱っていることがことだけにもっと広い世界を巻き込んでもよかったかと思われます。もし実際にこんなことがあったなら、とんでもないことになっているはずです。その部分が航空自衛隊の中での物語に終始してしまった感じが強く、非常にもったいない気がします。政府関係の人物も登場し、無視できない部分なのですが。安濃や加賀山を中心とした人間関係を描こうとしたのかもしれませんが、この物語に求められているのはそれではないと思うのです。
 もちろん、似たようなテーマを取り上げた作品もあり、そちらとの違いを出す意図があったであろうことも想像できますが、それでもなあ。

2011年9月8日読了 【6点】にほんブログ村 本ブログへ
迎撃せよ

迎撃せよ

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