森谷明子『緑ヶ丘小学校大運動会』

 六年生のマサルにとっては小学校最後の運動会。その朝の準備中に、優勝カップの中から薬の入ったピルケースを見つけた。卒業した憧れの先輩に関わる物かもしれないと考えたマサルは、運動会が終わるまでピルケースを隠し通すことに。一方マサルの父は校内でやりとりされるドラッグの情報を耳にして・・・


 運動会という衆人環視の場で行われる子どもたちの推理合戦と隠匿作戦。誰がピルケースを隠したのか謎と、その謎を解くためにはピルケースを隠し通す必要があるという条件がうまく絡められ、運動会の一日の流れに沿ってうまく最後まで運ばれていました。たとえ水面下でトラブルがあって少年探偵団が動いていても、運動会は淡々と進むのです。
 また、大人と子どもで名前の呼び方を巧みに使い分け、容易に真相へたどりつけないように工夫されていますが、それもごく自然な感じです。わざとらしさというものが感じられません。


 小学校の運動会という舞台を用いながら、事件の真相にからめてきっちり別のテーマを持ってきていて、それがあらわれる変化がなかなかおもしろく感じられました。ただ、大人視点中心になってしまったのは少々残念でした。そこまでのストーリーは子どもが中心でしたので、それを貫いてほしかったかなあ。
 加えて、登場人物が多く、最後でわかりにくくなったようにも見えました。前述のとおり呼び方を使い分けていたことも強く影響していたようです。もう少しシンプルでもよかったかも。

2011年9月5日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
緑ヶ丘小学校大運動会

緑ヶ丘小学校大運動会

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