越谷オサム『陽だまりの彼女』

 10年ぶりに出会った同級生は、美しく、魅力的で、そして仕事のできる女性へと変貌を遂げていた。冴えない、いじめられっ子だった彼女が。商談で偶然再会した真緒と親密になり、やがて結婚を意識する浩介だが、真緒には浩介が知らない過去があった・・・


 おーい、なんだよこれ。
 てっきり甘甘でごちそうさまって感じのラブストーリーだと思っていたのですが、予想をとんでもなく裏切られました。このラストシーンを肯定的にとらえるか、それとも否定的にとらえるか、非常に考え方がわかれる作品のような気がします。
 もちろん、ラストシーンに向けての伏線は十分に引かれています。それも、あからさまに。ですから、不穏な空気は容易につかむことができます。


 ただ、それが何なのか? ということが問題。
 想像の斜め上に行く展開であることは否定しませんが、それまでの物語がすべてラストシーンのためだけに存在しているように見えてきてしまいました。これは、残念というべき部分なのかなあ。おそらく同系の作品としてこれを挙げることが出来ると思うのですが、どちらかといえばそちらの方が好みかな。


 でも、おもしろかったのですよ。素敵だったのですよ、幸せなふたりのバカップルぶりは。真緒の気まぐれに振り回されることも、真緒の過去に心を痛めることも、彼女の親に会うことも、ふたりでいれば何もかもが美しく輝いて見える。そんな日々。それが、余計に終盤を切なく感じさせます。
 とりあえず、聴いてみましょうか。「素敵じゃないか」

2011年6月20日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
陽だまりの彼女 (新潮文庫)

陽だまりの彼女 (新潮文庫)

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