若竹七海『ポリス猫DCの事件簿』

 葉崎海岸に浮かぶ猫の楽園、猫島。小さなトラブルが頻発するこの島の派出所に勤務する警官は一人、いや一人と一匹だけ。七瀬晃巡査と相棒ポリス猫DCはたった一人と一匹でアクの強い猫島の住民や猫たちのトラブルを解決していく・・・


 猫島を舞台とした、なんともゆるーく、そして楽しい連作ミステリ。短編それぞれの分量は決して多くないのですが、その限られた紙幅でしっかりミステリしてくれました。確かに小粒でコミカルではありますが、それでも一編にいくつかの謎を盛り込んだりするなど、「隠し味にも贅沢に一級品を使いました」というような作品が並びます。


 どの作品も好きなのですが、あえてひとつ選ぶのであれば終盤の「ポリス猫DCと消えた魔猫」でしょうか。登場するのは魔猫とも言われるいわくつきのブロンズ像。それだけにこの像が何かを・・・というようなSFまがいなストーリーを先読みしたのですが、むしろもっと現実的でブロンズ像が活かされるストーリーでした。あの転がり方は予想外ですし、オチもばっちりでした。
 ひとつと言いながらもうひとつ挙げるなら「ポリス猫DCと草もちの謎」でしょうか。こちらも意外性のある展開でおもしろみがあります。


 それぞれの短編の冒頭は、猫島の七瀬たちとは直接関係のないような出来事で始まります。これと、猫島での出来事との結び付け方が巧みで、ひとつの短編で二度おいしいという気分になれます。
 また、葉崎という舞台で括られたシリーズですから、他作品の主要人物たちも無理なく姿を現すことができます。『猫島ハウスの騒動』で登場した島民たちはもちろん、『プラスマイナスゼロ』の三人組やあの作家先生も。こういうのって、読む側としてはうれしい気分になれます。まだまだ葉崎や猫島で事件を起こしてほしいなあ。


収録作:「ポリス猫の食前酒」「ポリス猫DCと多忙な相棒」「ポリス猫DCと草もちの謎」「ポリス猫DCと爆弾騒動」「ポリス猫DCと女王陛下の秘密」「ポリス猫DCと南洋の仮面」「ポリス猫DCと消えた魔猫」「ポリス猫DCと幻の雪男」「ポリス猫のデザート」
関連作:『クール・キャンデー』『ヴィラ・マグノリアの殺人』『古書店アゼリアの死体』『猫島ハウスの騒動』『プラスマイナスゼロ

2011年4月1日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
ポリス猫DCの事件簿

ポリス猫DCの事件簿

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