杉井光『神様のメモ帳』

 校舎の屋上で大半を過ごす内向的な高校生藤島鳴海。声をかけてきた同じクラスの彩夏に連れられ、ナルミはNEET探偵を名乗る少女アリスと出会った。アリスから手酷く扱われたナルミだが、信じられないような事件が起きたことでアリスと彼女を取り巻くニートたちの力を借りることに・・・


 アニメ化も決まった『神様のメモ帳』の第一巻。『さよならピアノソナタ』を楽しんだ割には随分間を空けてしまったのですが、予想していた以上におもしろい作品でした。
 設定としてはニート探偵アリスを中心とした少年探偵団のよう。「探偵」なんてついていても全くミステリじゃない作品もあるのですが、これはしっかりミステリしてくれました。真っ当に。部屋から出ようとしないアリスは、『GOSICK』のヴィクトリカのようなイメージです。一言で表現するなら傲岸不遜。もちろん、そんな面だけではありませんが。


 物語は思いもよらない形で事件が発生し、ナルミを非日常へと巻き込んでいきます。ともに事件を追いかける仲間はヒモだったり元ボクサーだったり少佐だったりという一癖も二癖もあるような顔触れです。しかし、彼らもそれぞれに秀でたスキルを持っていて、まさに「やる時はやる」といった人ばかり。アリスを含めた彼らニートたちとの出会いが、降りかかる事件が、無気力の塊のようだったナルミにどんな変化をもたらすのか気になるところではあります。
 事件そのものは悲しくせつなく、そして心がいたくなるようなものですが、いざという時の熱さがとても印象的でした。やればできるんじゃないか。そう言って誉めてあげたくなります。


 それにしても、思いもよらない形で退場した(といっていいのか?)人物には大いに驚きました。本当に、「まさかっ!」って感じです。いきなりそこに行き着くなんて。2巻以降、どうやって穴を埋めていくのか、興味津津だったりします。

2011年3月10日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
神様のメモ帳 (電撃文庫)

神様のメモ帳 (電撃文庫)