石崎幸二『記録の中の殺人』

 5人の女子高生の死体が、左脚と左腕が切断された状態で一ヶ所で発見された。彼女たちの共通点は誕生日。やがて同じように再び5人の死体が発見されるが、そのうち1人も前の5人と同じ誕生日。ユリ、ミリア、仁美そして石崎のミステリィ研究会は、殺人鬼からの避難という名目で、招待された新潟の孤島、深角姿島へ渡った・・・


 「女子高生ミステリー」フェアの一冊。もちろん、櫻藍女子学院高校のミステリィ研究会が登場です。
 第18回メフィスト賞を受賞した『日曜日の沈黙』から始まるこのシリーズ、7作目ですが石崎作品自体初めて読みました。ユーモアあふれる本格ミステリを書くタイプだと思っていたのですが、結論から言うと非常に楽しめました。
 ユーモアと言ってもその中身はユリ、ミリアというふたりの女子高生と石崎との漫才のような会話が中心。最初は面食らう部分もあったのですが、彼女らのペースに慣れてしまえばどうということはありません。まあ、多少しつこいかな。


 もちろん、中心にあったのは女子高生連続殺人事件、とりわけその動機。連続殺人を犯すシリアルキラーの動機がきれいに全体を結びつけていて、それでいて意外性も持ち合わせて秀逸。突拍子もないと言ってしまえばそれまでですが、これが実際の事件にはないミステリの楽しさではないでしょうか。
 また、孤島に渡るということは当然次に起こることが想像できるのですが、そちらの方もまたなかなか意外な動機が用意されていて、一粒で二度おいしい感じ。もっとも、「意外」というのは「むりやり」とか「強引」というのと紙一重のような気もしますが。


 強引といえば、動機よりもこの二つの事件の結び付け方だとか、そもそも深角姿島へ渡る過程の方が余程強引。それを批判するのは理解できるのですが、ただ、その強引な部分も苦笑いで済ませてしまいたい気分でした。
 ということでこのシリーズ、これ以前に6作あるんですよね。徐々に読もうかなあ。

2010年11月26日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
記録の中の殺人 (講談社ノベルス)

記録の中の殺人 (講談社ノベルス)

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