真木武志『ヴィーナスの命題』
夏休みに入って間もないある朝、グラウンドでひとりの生徒が遺体となって発見された。状況では校舎の窓から転落したようだが、自殺なのか他殺なのか事故なのかはっきりしない。学校の呪いという説もある。様々な立場にある17歳の高校生探偵たちは一斉に走り出した・・・
第20回横溝正史賞最終候補作。
これは叩かれるだろうな、というのが率直な感想。
まず読みにくい。刊行にあたって応募作を全面的に改稿したようなのですが、それでもまだ読みにくく、読者に途中で投げ出させようとする破壊力はかなりのもの。技巧的といえばそうかもしれませんが、ならばその技巧がここで必要なのか疑問です。
加えて、登場人物たちの言動があまりに中二病にすぎる点があります。これは好き嫌いですが、受け付けられない人にとっては絶対拒否でしょう。
そしてその結末。再読必須という難解な真相。最後ですっきり真相を見せてほしいと願うミステリ読者にとって、この作品がどう映るか。
と、問題点をあげてみました。
でも、はっきり言って僕個人はこの作品のことが好きだったりします。
読者に対してあまりにも高い要求をする本格ミステリであり、同時にあまりに青くさい天才たちがそろった青春小説。どちらをとってみても、そこに輝くものが見えた気がします。ただ、そのふたつをかけ合わせたときに、なぜだか曖昧模糊としたものに仕上がってしまったようで残念です。10年という長い間隔を経て発表される第二作ではそういった問題点が解消されているのか、どう進化しているのか、期待したくなります。
横溝正史賞選考時にこの作品を推した綾辻さんは、『ヴィーナスの命題』から思い出される先行作品のひとつとして、法月さんの『密閉教室』をあげています。なるほど、確かによく似た雰囲気を感じ取ることができます。『密閉教室』を気に入っている方は、一度手に取ってみてはいかがですか。
ヴィーナスの命題 (角川文庫) | |
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