野村美月『“文学少女”と飢え渇く幽霊』
文芸部が設けた「恋愛相談ポスト」に嫌がらせのような手紙が相次いだ。「憎い」とか「幽霊が」という具合に。「これは文芸部への挑戦!」とばかり張りこむ遠子先輩と心葉くんの前に現れたのは、制服に身を包んだ少女。だが、彼女は「わたし、もう死んでるの・・・」と笑うのだった・・・
前作で味をしめ、「恋愛相談ポスト」なるものを設置したところから始まるシリーズ第二作。今回もまた題材となった名作を上手く使っている感じです。いえ、読んだことないですが。題材を読んだ人と読んだことのない人、どちらがより楽しめるのでしょう?
ミステリのような雰囲気と、ホラーというか怪談のような雰囲気が程良く組み合わせられたようで、とてもおもしろかったです。
ミステリ的なガジェットとして今回は暗号が登場。正直いつもこういうものを真剣に解こうとは考えないのですが、ひとつこんなガジェットが入ると俄然雰囲気が出ますね。
今回登場する雨宮蛍にとって、そして彼女の周囲にいた人物にとっては本当に悲しい物語でした。その内に秘めた激しさと、それを嘲笑うかのように押し寄せる運命。せめてもう少し彼女に幸福をと思わずにはいられません。
一方、たとえ生命の危機に陥ろうとも、マクドナルドの童話全集の心配をする遠子先輩がたまりません。いくら文学少女だとはいえ、この場面では心葉くんの突っ込みが的確。決して食い意地に感心しているべき場面ではありませんけど。シリアスで悲しい物語の中で、くすっと笑わせてもらいました。
心葉くんが琴吹さんの病室で犯してしまった「失敗」。これが心葉くんの過去と深く関係しているであろうことは明らか。このあたりがどういう形で使われるのか、これからが楽しみです。もちろん、今回ちょっと控えめだった琴吹さんのがんばりにも期待なのです。
関連作:『“文学少女”と死にたがりの道化』
”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫) | |
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