壁井ユカコ『14f症候群』

 制服を着た14歳は無敵。ピチピチの素肌と膝上20センチのスカートからスラリと伸びた脚で、彼女たちは世の中を闊歩する。だが、成長期にありがちな貧血と関節痛に病院から出された赤と白のカプセルを飲んだ翌朝、彼女たちの身に変化が起きた・・・


 我が世の春を謳歌する14歳の少女たちの身に起きた不思議な出来事を描いた短編集。
「性」
 つきあっている竹田との初体験を拒んだ翌朝、目覚めたチホはパジャマのズボンを下から突き上げる異物を確認した・・・「朝、目が覚めたら」というのはよくある変化のタイミングですが、そこから先の展開がおもしろいです。特にチホの割り切り方とか、竹田の対応とか。
「欲情」
 ストーキングの証拠を愛の妹咲につかまれた僕。脅されて咲との待ち合わせに行くと、そこにいたのは愛?・・・遠くの○○よりも近くの△△。なんとなく予想できる流れでしたが、咲のキャラクターで引っ張った感じ。
「従順」
 犬になってしまった志乃。彼女を拾ったのは、「少女誘拐殺人をしそうなオタク」と嘲っていた男で・・・新聞が効いています。こちらはちょっと予想外でした。
「独占」
 美憂が家に訪ねてきた。だが玄関を開けると、そこにいたのは七美、つまり自分・・・歪んだ感情、あるいは倒錯した愛情。なんとも気分の悪い結末でした。
「死命」
 智紗子の左手に宿ったのは不思議な生命体。異形のいる場所はニット製のバンドに覆われていた・・・気味の悪さと微笑ましさが入り混じったかのよう。それでも最後をきれいにまとめてくれました。


 14歳の中二少女たちの万能感と、異常な身体変化を組み合わせた作品集。「マリオがスター食ったときの無敵モードみたいなもん」なんて、ちょっとうまい例え方だと思います。もっとも、もしかしたら「無敵」という言葉から一番連想しやすいものかもしれませんけど。
 同じグループの6人がそれぞれ登場するわけですが、同時進行されている5つの物語をうまく跨いで行ったように思いました。
 また、自分の変化に対する受け入れが早く、そこに若干の違和感が。あまり元に戻ろうとはしないのです。もちろん、受け入れないと物語が進まないという面もありますが、ちょっと不自然でした。特に「従順」で気になりました。


収録作:「性」「欲情」「従順」「独占」「死命」

2010年1月15日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
14f症候群
14f症候群壁井ユカコ
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