アンソロジー『Story Seller 2』

 「面白いお話、再び売ります。」今回も表紙の言葉に嘘偽りはありません。早くも文庫化されると聞き、その前にとあわてて読みました。


沢木耕太郎「マリーとメアリー」
 吉行淳之介に初めて会ったとき。そこから話は連鎖して・・・バーを舞台にした某ラジオ番組でもこんな会話をしていそうである。残念ながらちょっと合いませんでした。
伊坂幸太郎「合コンの話」
 合コンの準備から待ち合わせ、そして解散まで。そう、これはどこにでもある「合コン」の話・・・なるほど実験的な作品。多少の細切れ感は否めないものの、最後まできれいにまとめられていて、おもしろく読めました。心理戦も巧み。
近藤史恵「レミング」
 ついにエースとなった石尾。絶対的な能力を持っている彼だが、突如不可解なレースが続いた・・・前回に続いて『サクリファイス』の外伝。相変わらずの自己犠牲の世界ですが、そのあたりがうまく使われています。
有川浩「ヒトモドキ」
 突然、彼女たち家族は伯母と同居することになった。だが、伯母は非常識な人物で・・・今までとはちょっと違った作風かな。怖いとか嫌だとか不愉快だとか、そういった感情が先に立つのですが、最後に印象が変わるようなキッチリとした結末を見せてくれます。
米澤穂信「リカーシブル ―リブート」
 ママに連れられて引っ越したわたし。サトルはこの町に来てヘンなことを言い出した・・・長編『リカーシブル』の冒頭部分を短編に仕立てたもの。超能力を使った、おもしろい長編になりそうだと予感させます。
佐藤友哉「444のイッペン」
 バイトでやってきた東京ビッグサイト。だが、開場前のわずかな時間に444匹の犬が姿を消した・・・タイトルはこじつけっぽいのですが、気になる作品。特に土江田の過去が。このシリーズはすごく読みたくなりそう。
本多孝好「日曜日のヤドカリ」
 一緒に暮らしだして一年になる娘と義父。母親が留守の日曜日、ひとりの男の子が家にやってきた・・・ほのぼのとした日常を描くのかと思いきや、いきなりサスペンスになりその落差に驚き。弥生の年齢以上にできた人間性と、とった行動とのギャップがおもしろかったです。


 メンバーにほとんど変わりはなく、前回同様に豪華。しかも質も高い。今回も十分に楽しませてもらいました。近藤さん、ユヤタンあたりは前回と同じシリーズものなので、一冊にまとまるのが楽しみです。
 楽しみといえば、『Story Seller 3』。情報があるわけではないのですが、きっと春には出るのだろうなあと楽しみにします。


収録作:沢木耕太郎「マリーとメアリー」/伊坂幸太郎「合コンの話」/近藤史恵「レミング」/有川浩「ヒトモドキ」/米澤穂信「リカーシブル ―リプート」/佐藤友哉「444のイッペン」/本多孝好「日曜日のヤドカリ」
関連作:『Story Seller』/近藤史恵サクリファイス

2010年1月13日読了 【9点】にほんブログ村 本ブログへ
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