綾辻行人『Another』

 家庭の事情によって東京から夜見山に引っ越した榊原恒一。肺気胸の発作によって転校前に入院した恒一は、登校初日に3年3組の異様な状況に気づく。ひとりの女子生徒が、生徒はおろか教師からも「いない者」として扱われているのだ。だが、それは・・・


 綾辻さんといえば『十角館の殺人』で新本格の扉を開いた方ですが、『殺人鬼』や「囁き」シリーズなどホラー作家としての側面もあります。本書はその両方を併せ持つ、言わば新本格とホラーの融合体です。


 基本的にはホラーとしての面が強く出されています。学校の怪談から入る「3年3組の呪い」。謎めいた少女見崎鳴の存在。決して目を背けたくなるようなものではなく、どちらかと言えば先が気になる怖さ。もちろん、凄惨なシーンもありますが、過度に強調されずホラーに縁のない人が読んでも差し支えない程度でしょうか。むしろ存在というものが揺らいでいくことに不安を掻き立てられます。


 また、ミステリとしてみれば第一部に【What?…Why?】、第二部に【How?…Who?】という副題がつけられているように、少しずつミステリの質を変化させていくことで読者の興味を逃さず、しかもホラーの不気味な部分を増幅させていった気がします。少しずつわかっていくたびに、新たな謎が増えていく底なし沼のような状態です。なんといっても、【Who?】の扱いには驚きを隠せませんでした。


 おそらく、この感想ではおもしろさは全然伝わらないことでしょう。未読の方にはぜひオススメしたい一冊。600ページ以上の長さをまったく感じさせない、綾辻さんの新たな代表作です。

2010年1月5日読了 【9点】にほんブログ村 本ブログへ
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Another
Another綾辻行人
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おすすめ平均 star
star一気に読みました。
star力作ではありますが……
starホラー×ミステリ−−コラボの1つの完成形
stars眉村卓氏のジュブナイル小説を読んだようでした。
stars綾辻の新境地にして真骨頂。

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