有川浩『フリーター、家を買う。』
新卒で入った会社が気にいらず、たった3ヶ月でやめてしまった誠治はフリーター。だが、長年続く近所のいやがらせによって、気付かぬうちに母親が精神をわずらっていた。理解のない父親を頼りにできない誠治は、引っ越しのためにバイトをしつつ本気で再就職活動を始めた・・・
タイトルから想像するよりもかなり重い内容を含んでいました。それでもどんどん読みたくなるのが有川さんの腕ですね。
序盤は誠治の言動が身勝手で痛々しく、あまりいい気分ではなかったのですが、それも母親の鬱が発覚するまでのこと。一念発起してからの誠治は頼もしく好感が持てます。自分の置かれた現状をしっかり認識しなおし、それまでの経験を活用して奮闘する姿がよいのです。もちろん、これは姉の応援あってこそ。姉の存在は大きく、母親にとって身勝手な息子や理解のない夫との生活の中で、遠方に嫁いだとはいえ頼りになる娘の存在がどれだけ救いであったことでしょうか。
一方、父親は「経理の鬼」と言われる人で、切れ者なのでしょうが考えが古くて固い。おまけにプライドは高いという厄介なタイプ。妻の置かれた状況を認められないのも当然でしょうか。それでも、誠治は父親を見捨てず、上手にコミュニケーションをとることで輪の中に引き込みます。ちゃんと活躍の場を作られていることに父親も読者も救われる気分です。
後半は有川さんの作品らしく、しっかりとラブコメが入ってきます。これはお約束。なくてもよかったかもしれませんし、もう少し話をふくらめてスピンオフの形で別の機会にしてもよかったかもしれません。
決して、フリーターが家を買ったわけではありませんでしたが、がんばろうという気にさせてくれる本でした。
フリーター、家を買う。 | |
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