雫井脩介『殺気!』
20歳の大学生佐々木ましろには特殊な能力がある。それは他人の殺気を感知する能力。周囲に殺気を持った人間がいると、強い不快感があるのだ。ある日、ましろのバイト先に強盗がやってきた。彼女の能力と勇敢な態度で難を逃れたが、それをきっかけに彼女の過去を調べることに・・・
『栄光一途』『白銀を踏み荒らせ』に出ていた佐々木深紅がこちらにも登場するということで読んでみました。主人公佐々木ましろは彼女の従妹です。
雫井さんの作品らしく、とても読みやすい作品でした。するするっと頭の中に入ってくる感じです。ただ、それだけにストーリーもするすると流れていくようで引っ掛かりがなく、正直なところ強い印象を残すものではありませんでした。
物語は、ましろが感知する殺気と彼女の過去を中心に動いていきます。ただし、ましろが殺気を感じるときは何かしらの事件が起きるとき。ゆえに、大小さまざまな出来事が頻発します。加えて、彼女の能力の原因になったと考えられる過去の連れ去り事件などもあります。いろいろありすぎて、ちょっと詰め込みすぎではないかと。事件が連続することでストーリー上にいまいちメリハリが感じられず、残念でした。そういった出来事を越えていく友情の強さが見られたのはよかったです。
登場人物たちは今回もとても生き生きとしていて、読んでいて好感が持てます。主人公であるましろはもちろんですが、その友人たちをはじめとして一癖あっておもしろい人物たちがそろっています。中でもやはり深紅のキャラクターは強烈です。作者にとっても、使い勝手がいいのかもしれません。あのマイペースぶりはすごい人物です。
殺気を感知するというましろの設定はなかなかおもしろく、また違った形でも使えそうな気がします。今度はもうひと工夫された物語で彼女たちが登場してくれたらうれしいです。
殺気! | |
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