東野圭吾『眠りの森』

 バレエ団の事務所で、侵入した男がひとりの団員によって殺された。当然、正当防衛を主張するのだが、それが証明される前にバレエ団で次の事件が。事件を担当する刑事・加賀恭一郎は、捜査に関わる中でダンサーのひとり浅岡未緒に惹かれていく・・・


 加賀恭一郎、刑事になる。『卒業 雪月花殺人ゲーム』で卒業間近の大学生として登場した彼が、なんと刑事として再登場。加賀恭一郎シリーズ第二作。
 読んでいると、まずダンサーたちのあまりにもストイックな生き様に注目が行きます。精神的にも肉体的にも自分を追いつめていく姿には頭が下がります。ただし、事件はバレエ団内の表に見えない複雑な人間関係とその生き様によって、加賀刑事を真相から遠ざけようとするのです。だからこそ、真相に手が届いたときには、悲しく切ない気分にさせるのでしょう。その理由はこれだけではないでしょうが。


 さて、この作品はミステリとしてだけでなく、恋愛小説としてもまた読者をひきつけます。事件の関係者であるダンサー浅岡未緒に、加賀はどんどん惹かれていくのです。その姿はまるで少年のよう。学生時代の彼の姿からは、ちょっと想像しにくいかも。話の中で沙都子らしき女性のことも話題になりますが、加賀は彼女のことはもう吹っ切れたようですね。


 事件の真相は『卒業』に続いてこちらも悲しく、切ないものでした。この動機がなんとも言えません。


関連作:『卒業 雪月花殺人ゲーム』『どちらかが彼女を殺した』『嘘をもうひとつだけ

2009年11月19日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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おすすめ平均 star
star恋愛もの
star眠リの森
star特に女性にオススメだと思います。
stars東野圭吾お得意の純愛模様も織り交ぜ、読みやすい良作
stars驚きと悔しさと爽やかさが共存している作品

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