東野圭吾『卒業 雪月花殺人ゲーム』

 就職を間近に控えた大学四年の秋、同級生の祥子がアパートで遺体となって発見された。彼女の死は加賀たち仲間を悲しませるとともに、疑問を残した。彼女は自殺なのか、他殺なのか。その疑問が解ける前に、次なる悲劇が彼らを襲う・・・


 加賀恭一郎初登場。後に刑事となる彼も、この段階ではまだ大学生でした。『嘘をもうひとつだけ』を読んだときもこんな感じの人だったかなあ。なんとなくイメージが違う気もします。
 加賀が事件の真相究明に乗り出すきっかけになったのはもちろん祥子の死なのですが、そちらよりもむしろ第二の事件のほうが目を惹きました。まさかあんな複雑なものを使うなんて。読んでいるほうは理解するのもなかなか難しいかもしれません。わかりやすくするために図も入れてくれているのですが、それでもやっぱり難しいのです。
 もちろん、この事件だけでなく最初の祥子の死も捻りの効いたもの。そして、こちらもまた悲しさ、やりきれなさが残ります。


 真相は悲しく、そしてさびしいものでした。でも、これこそが本当の卒業なのかもしれません。近すぎる、仲の良すぎる関係というのも、それが壊れたときが悲劇ですね。


 余談ですが、加賀たちの大学生活にちょっとした親近感を覚えました。もう二十年以上前の作品ですから、今の大学生たちから見たら随分古臭いことでしょう。僕は彼らよりもむしろ加賀よりの世代なので、懐かしいというほどではなくてもよくわかる気がします。祥子や波香が住んでいた『白鷺荘』ようなアパート、今はもう少ないのでしょうね。


 最近の東野本格は、「ガリレオ」のためかやたらと理系的な印象を持っていたのですが、これはストレートな本格推理でした。


関連作:『どちらかが彼女を殺した』『嘘をもうひとつだけ

2009年11月17日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
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