石田衣良『6TEEN』

 あれから2年。中学生だったぼくたちも、別々だけど高校に入学した。だけど、バラバラになったわけじゃない。呼べばすぐに集まるし、「もんじゃ ひまわり」を秘密基地によく集まっているんだ。ダイとジュンとナオトとぼく、固い絆とゆるい冗談で結ばれた鉄壁の四人の物語・・・


 直木賞受賞作『4TEEN』の続編。少し成長した十六歳のストーリー。
「おばけ長屋のおばあ」
 僕たちの秘密基地「もんじゃ ひまわり」。そこの佐知ばあは周囲からよく思われていない。ちょうど出戻り娘が帰ってきて・・・いくつになっても親子は親子。月島という古い部分と新しい部分を併せ持つ町を巧みに活用しています。
「クラインの妖精」
 高校で初めての友人、マサアキ。マサアキはぼくと同じ二軍の控え選手みたいで、まったくよくわからないクラスメートだった・・・ここでひとつ重いテーマ。どう流れていくかすぐ想像はできるけれど、最後に見せるテツローの態度が気持ちいい。
「ユウナの憂鬱」
 ダイと同棲しているユウナは一歳年上で子連れ。ダイには話せない彼女の相談事は・・・これはちょっと下世話すぎる話かもしれません。
携帯小説家に出会ったら」
 クラスで話題の『空の十字架』という携帯小説に、いつも自転車にのってるテツローが登場するらしい・・・ふたりだけ? の秘密。こんな共犯関係ってなんかいいですね。共犯っていっても犯罪じゃないけど。
「メトロガール」
 ナオトがあこがれている彼女は、毎日地下鉄で見かける子。名前も知らない・・・男子はシンプルでストレートで。総じてそうかもしれない。こんな友人関係も悪くない。
「ウォーク・イン・ザ・プール
 毎日のようにプールで歩いている〈水中歩行のプリンセス〉。ぼくはひとりだけ彼女のお願いを聞くことになった・・・こんな軽はずみな提案、ちゃんと断れるテツローが素敵ですね。みんななら、どうする?
「秋の日のベンチ」
 隅田川の河川敷で出会った立派なホームレス、トクさん。ぼくたちは話し相手になった・・・誰にも迷惑をかけず、他人に流されず自分なりの生き方をする。言葉にするのは簡単だけど、今の日本ではこれほど難しい生き方はないのかも。
「黒髪の魔女」
 いよいよナオトは結花さんと初デート。ぼくたち三人もついていくことになったけれど・・・ずっといっしょにいたら、こんなこともある? こんなタイミング、立ち会いたくはない。最後の一文のとおりですね。
「スイート・セクシー・シックスティーン」
 四人で見ていたエログ。そのひとつが、どうやら月島に住む十六歳の子のものらしい・・・これでよかったのかなあ、という気がしないでもないのですが、こんなものかなあ、という気がしないでもない。
「16歳の別れ」
 月島中学の同級生・ユズル。大病を患う彼の闘病記がテレビ局にドキュメンタリー化される。ぼくたちも一役買うことに・・・誰かの死なんてちょっとした日常。これから何度も乗り越えなくちゃいけない。ただ、忘れず思い出すことがきっと大切。


 『4TEEN』を読んだのはもう何年前だろう。明確に覚えているわけじゃないけれど、あの時よりもやや中身が薄くなったような気がしてなりませんでした。かがやきが少しあせたというか。なんでしょう。下世話な感じの内容が増えたからかな。
 一話20ページ余りとコンパクトにまとめられた読みやすさは相変わらず。前向きな気持ちにさせてくれる短編集でした。


収録作:「おばけ長屋のおばあ」「クラインの妖精」「ユウナの憂鬱」「携帯小説家に出会ったら」「メトロガール」「ウォーク・イン・ザ・プール」「秋の日のベンチ」「黒髪の魔女」「スイート・セクシー・シックスティーン」「16歳の別れ」
関連作:『4TEEN

2009年11月10日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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