林亮介『迷宮街クロニクル 3 夜明け前に闇深く』
新しい年は迷宮街にもやってくる。後藤が提示したイラストは、探索者たちに波紋を巻き起こした。そのイラストは、第四層までの縦穴にゴンドラを通して、一気に距離を短縮しようというもの。だが、この計画にはひとつの条件があり、それは探索者たちをふたつに分けたのだった・・・
全三巻の予定が分量の都合で増えてしまった三巻の上。なんだかとってもフラグが立っていませんか、真壁に。
あの悲劇の場所に真壁がいて、それでもあるいはそれゆえに能力を高く評価されたこと、少しずつではあるけれど隠していたものを見せだしたこと、そしてあの決意。これだけはっきりしたフラグも珍しい気がします。読者の裏をかく展開にしてほしいなあ。
新たに「マドンナ」野田双葉が登場。その動きはなんとも軽やかで、ほかの人ではできないことをやってのけた印象が強いです。ちょっと今までの迷宮街にはいなかったタイプでしょうか。
もちろん、迷宮街での出来事が中心でしたが、今回はもうひとつ、東京で動きがありました。確かに、いつ突然死んでしまってもおかしくないようなところにいる男を待ち続けるという辛さは想像できなくもないのです。むしろ、由香里のことを思って行動する奥野道香がそそのかしているかのように見えます。
一冊通して「嵐の前の静けさ」のようでした。きっと最後の一冊は波乱に満ちたものになるはず。ゴンドラがもたらすものは何か、真壁は無事に由香里のもとへ戻ることができるのか、そして次に散っていくのは誰?
関連作:『迷宮街クロニクル 1 生還まで何マイル?』『迷宮街クロニクル 2 散る花の残すもの』
【感想拝見】- 狭間の広場さま(2010.04.13追加)
迷宮街クロニクル3 夜明け前に闇深く (GA文庫) | |
林亮介/津雪 ソフトバンククリエイティブ 2009-10-15 売り上げランキング : 3580 おすすめ平均 特異ではあってもやはりそこは「街」だった 深化する物語 ただ一人決断する者、誰かに背中を押してもらう者 執拗なまでに深く、より深く緻密に 「上巻」でも「前編」でもなく。 Amazonで詳しく見る by G-Tools asin:4797356707 rakuten:book:13300007 |