新城カズマ『15×24 link one せめて明日まで、と彼女は言った』
自殺志願者が集うサイト。そこで〈17〉と出会った徳永準は心中を決意した。決行は大晦日。だが、携帯をなくしてしまったことから、自殺を予告するメールが書きかけで送られてしまった。受け取った者たちは、自殺を止めようと思い思いに動き出す・・・
どうやら全6巻らしい新城さんの新シリーズ。
とにかく登場する人物が多く、しかもそれぞれが語り手となって話を進めていきます。おまけにその中には、電話やメールで見も知らぬ同士が相手に対する想像を膨らめていたりして、わかりにくいことこの上ない序盤でした。これに戸惑って、読むのにちょっと時間をとってしまいました。まさに混乱、カオス。
彼や彼女は純粋に命の大切さから自殺を止めようとしているものもいれば、別の動機から止めようとするものまで様々。中には人づてにメールが転送された徳永を知らない人もいるわけで、それは仕方のないところかもしれません。この辺の温度差が状況を更に混沌とさせていておもしろいのです。
また、彼らが知っている情報は全体の一部であり、読み手が知っているのはそれらのすべて。この「神の目線」とでもいうべきものも、またおもしろさのひとつでしょう。
ただ、登場人物の多くはいかにもこの年齢にありがちに思われるような青臭さと過剰な自意識に溢れていて、少々うんざりしてしまいました。
ラストシーンの時間は12:50。まだこの1冊の段階では、メールが送られてからたった4時間しか経っていません。まさにギュッと凝縮された濃密な4時間です。
でも、この4時間の間に捜索側には、「徳永はどこで自殺しようとしているのか」とか「自殺相手の〈17〉とは誰なのか」というような謎が提示されました。これが残り5冊の間でどのように展開していくのか、楽しみです。
15×24 link one せめて明日まで、と彼女は言った (集英社スーパーダッシュ文庫 し 5-1) | |
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