誉田哲也『月光』

 大好きだった姉は、半年前に同級生のバイクに轢かれて死んでしまった。本当に事故なの? 結花は涼子の死の真相を探るべく、姉と同じ高校に進学し、同じ写真部に入部した。天才的と言われ、全国大会で優勝したピアノを捨てて・・・


 はっきり言って、気分のいい小説ではありません。正直、ここまで性描写をすべきだったのかという疑問もあります。同じストーリーでも、もっとほのめかすだけで済ますこともできたのではないかとも。
 しかし、そういったある意味余計な部分を取っ払ってしまうと、あまり特徴のないストーリーになってしまう危険性も持っています。結花がたどり着いた涼子の秘密も珍しいものとは感じませんし、優等生の美少女の死の真相を複数視点で解き明かすというのもどこかで読んだ気がします。


 では、この作品の取り柄はと言えば、それは読ませる文章力ではないでしょうか。特別濃厚な文章ではありませんが、読み手をグイグイと引き込む力があります。テンポもいいです。視点人物が結花、羽田、菅井とたびたび変わるのも、最初は若干戸惑いましたがすぐに慣れました。


 登場人物は自己中心的な人が多く、その考え方は理解できます。しかし、わからないのは野々村涼子。彼女の言動は自己完結型で、最後まで理解できませんでした。他にもいくつか曖昧にされたままで残された部分もあるように思いました。


 知らないほうがいいこともある、とよく言いますが、結花の場合はどうなのでしょう。彼女は姉の死の真相と秘密を知らないほうがよかったのでしょうか。知ってしまった今、彼女が強く生きていってくれることを祈るばかり。

2009年10月6日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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おすすめ平均 star
star予断を持たずに読んでみよう
starなぜ買ったんだろう。。。
star残酷…哀しさ…後悔…
starsあえて星5つとする
stars不快な程のリアリズム

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