東野圭吾『パラドックス13』

 3月13日13時13分13秒。その瞬間を境に、世界は変わった。人という人が消え、東京の真ん中に残されたのはわずか数人。襲い来る大地震、強烈な台風、インフルエンザ。人々はなぜ消えたのか、彼らはなぜ残されたのか、そしてどのように生きればいいのだろうか・・・


 東野さんの新刊はなんとSFパニック小説。「P-13現象」というなんだか得体の知れないものが冒頭から出てくるのですが、そこに神経を使うと読み進められそうにないので、単純にパニック小説、サバイバル小説として楽しみました。


 相手は都会での災害、過去の常識、弱い心。地震や台風がもたらす脅威よりも人間なのだなあとつくづく感じました。初めて会ったような人物を信じていいのか疑心暗鬼に陥ったり、あるいは独りよがりな自己保身に走ったりという弱い生き物ですから。
 もちろん、自然災害が怖くないわけありません。繰り返される地震と洪水は彼らの行く手を阻む大きな脅威です。自分たちが置かれている状況を正確に把握できないだけに、より不安な要素を孕んでいます。更にインフルエンザのようなどうしようもない病気や致命的なケガの方が怖いかもしれません。


 こういった大風呂敷を広げた作品の場合、途中途中の展開よりも広げた風呂敷をどうやってたたむのか、すなわち結末をどのような形にするのかといった部分が出来不出来を決めます。その点でこの物語の結末は、どことなくもやもやが残るような形でした。そこに至るまでは非常に読ませる作品だっただけに残念です。いっそのこと、このSF要素へのこだわり、説明を捨てて、サバイバルに徹したほうがよかったかもしれません。もちろん、こちらもどう締めくくるかという問題は残るのですが。

2009年8月18日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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パラドックス13
パラドックス13東野圭吾
毎日新聞社 2009-04-15
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おすすめ平均 star
star良くも悪くも
starSFというより、人間ドラマ
starぐいぐいと引き込まれ…
stars意欲作 ≠ 会心作
stars1度読んだ限りではわからないのかな

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