柴村仁『プシュケの涙』
夏の日、一人の少女が死んだ。校舎の四階から飛び降りて。落下していく吉野彼方と目が合った榎戸川は、彼女の自殺に疑問を持った変人由良とともに彼女の死の真相を追うことになってしまった・・・
なんとも救いようがない物語。
物語の前半と後半を入れ替える構成により、陰鬱になりがちな物語にアクセントをつけるだけでなく、読後感の悪さを少しだけ中和することに成功しています。ただ、反対にこの出来事に対するやるせなさというか、切なさは5割増し。この構成をとることで何かミステリ的に仕掛けがあるとかいうのとは違うのですが、これはこれで非常に効果的。扱った題材はもちろんですが、この選択が勝敗の分かれ目です。
真相を知るために由良が繰り出してくる手段がえげつないのですが、そんな中にも彼が抱える影のような部分が見え隠れして、心の底からいやな奴とは思えないのが不思議でした。
決して読んでいて楽しい本ではありません。でも、心のどこかを揺すぶられるような物語です。覚悟してお読みください。
プシュケの涙 (電撃文庫) | |
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