小木君人『その日彼は死なずにすむか？』

　風邪薬の箱に仕掛けられた爆弾で命を落とした17歳の鋼一。だが、彼の前に現れたマキエルは、七年前に戻って人生をやり直し、奇跡の欠片を手に入れればその先も生き延びることができると言う。鋼一はひとつの目的をもって10歳からやり直すことを決意する・・・

　これは非常におもしろいやりなおしもの。決して従来のやりなおしものの範疇からはみ出したものとは思えませんが、味付けのうまさが際立っていました。
　死んだはずの高校生がもう一度チャンスを与えられて小学生からやり直します。当然、奇跡の欠片を集めて死なずにいたいと思うのと同時に、弥宵を助けたいと考えているあたりから泣かせます。もちろん、奇跡の欠片が何なのかさっぱりわからない状態で、悔いのない人生を送りたい、弥宵を助けたいという気持ちがすんなり理解できます。

　また、同時に鋼一の成長もよくわかるような物語です。もっとも、これは一旦17歳まで生きた記憶が残っていますから当然といえば当然。ただ、性格は年をとっても簡単に変わるわけではないと思うので、やはりそこに鋼一の努力というか勇気があったのだと素直に考えることにします。
　鋼一が出会う三人の少女との関係も、とてもほほえましいものでした。小学生らしくどことなくギクシャクした部分があったり、かと思えば真っ向勝負のストレートだったり。そんなところになんだか揺さぶられました。それに、鋼一にとっての案内役マキエルもアクセントとしていい役回りでした。

　ただ、もっと伏線として扱えたであろうシーンも残されていたように思いますし、七年やり直したのに二年目以降はスルーというのももったいない気がします。これが受賞デビュー作でなければ、もっと長いスパンでいろいろ盛り込んだものにできたのでは。
　もったいない、という気分にはなりますが、読後感もよく、素直によかったという気持ちにさせてくれる物語。オススメです。

2009年8月5日読了　【8点】

その日彼は死なずにすむか? (ガガガ文庫)
	小木君人／植田亮 小学館 2009-06-18 売り上げランキング : 40877 おすすめ平均 これでは。。。 青春 なかなか良作ですが…… 予想とはちがってました Amazonで詳しく見る by G-Tools asin:4094511423　rakuten:book:13209176