佐々木譲『暴雪圏』

 彼岸荒れ。三月の彼岸の時季にやってくる大型の嵐。十勝平野を襲った十年ぶりの超大型低気圧は誰彼なく足止めさせた。暴力団事務所を襲った殺人犯も、不倫していた人妻も、会社の金を持ち出した男も足止めされた。警察も動けない吹雪の中、志茂別にいる警官は駐在の川久保ただ一人・・・


 『制服捜査』に引き続き、道警の不祥事の余波によって志茂別で駐在勤務となった川久保が登場するシリーズ。
 とにかく、大自然の驚異に圧倒されます。雪、吹雪、そういったものとは無縁の生活をしてきただけに、尚更そう感じるのかもしれません。この物語は北海道の自然が主役です。


 数々の登場人物の視点で語られる物語は、中盤まではそれぞれの関連性が見出せませんが、それによって読みにくいということはありません。むしろ大雪の中で起こる様々な出来事と、刻々と変化していく雪害の状況は、読み手を離しません。おもしろいサスペンスです。


 ただ、不満な点もあります。そのひとつが川久保の活躍です。視点が散っていることもあり、序盤から川久保が活躍しているといった感じは受けません。もちろん、要所要所で駐在として様々な形で事件に絡むのですが、主人公としてみた場合かなり地味です。加えて嵐の後の結末がかなりあっさりとしている為、それまでの盛り上がりも打ち消しているように思います。「北海道の自然が主役」とはいうものの、そこには川久保の印象が薄いことも影響しているはずです。
 また、盛り上がりを作るためには必須だったかもしれませんが、様々な事件の関係者が一ヶ所のペンションに集まるのもやはり不自然に思えます。地形的な説明がされてはいましたが、ちょっとしたひっかかりを覚えました。

2009年7月18日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
暴雪圏
暴雪圏佐々木譲
新潮社 2009-02
売り上げランキング : 7870

おすすめ平均 star
star警察小説を超えた警察小説
star彼岸荒れ
star言うことなし。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
asin:410455507X rakuten:book:13118350