宮部みゆき『英雄の書』
兄・大樹がクラスメイトをナイフで刺し、姿を消した。小学五年生の妹・森崎友理子にとって、それは信じがたい出来事だった。しばらくの後、混乱とショックから立ち直れない友理子は、大樹の部屋で一冊の古い本に話しかけられる。大樹は「英雄の書」に魅入られてしまった、と。友理子は兄を取り戻すため、“無名の地”へ旅立つ・・・
今までファンタジーはちょっと敬遠する向きもあったのですが、なんだかスンナリ読んでしまいました。いや、スンナリというのは少々言い過ぎかも。上下巻あわせて700ページほどですが、上巻の半ばまでの説明が多い部分はやや苦痛。友理子がユーリという名のオルキャストとして旅立つにあたり、不足している知識を与えられるのですから仕方がありません。この辺がないと世界観なんて言葉、使えないですし。
そんなところは全体から見れば一部分に過ぎず、通してみるとスピード感がある物語です。特にヘイトランドでの冒険は読んでいて楽しく、あっという間でした。
誤解でなければ、ファンタジーの常として魔法だとか、戦闘だとかがあると思っているのですが、そういった部分はかなり少なく、あまりファンタジーらしさを感じさせません。むしろ、いじめや学校問題、あるいは家庭内の問題など、極めて現実的な問題が扱われています。ファンタジーの皮をかぶった社会派?というくらい。この傾向は宮部さんらしいかもしれません。
兄を救いたい、取り戻したいというユーリの想いがあらゆる場面で繰り返され、読む者の心を惹きつけます。本当に純真で健気です。もちろん、それだけではいけないのであって、この物語は友理子の成長の物語としてまとめられ、冒険の後には純心で健気なだけではない少女に成長しているところがうかがえます。始まりを感じさせる終わり方もいいですね。
宮部さんの作品は僕としては随分ご無沙汰で、もう5年以上読んでいなかったのですが、これを機に『ブレイブ・ストーリー』も読みたくなりました。
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