鷹羽知『紅はくれなゐ』
遊郭の街吉原。そこは要塞のごとき壁と堀に囲まれた武装都市。昴州の高官と遊女の殺人事件が相次ぎ、秋月楼の花魁八橋も殺された。代わって秋月楼のお職となった紅は、大行事である花魁道中に出ることを決めたが、実は紅にも脅迫状が届いていた・・・
「眼球奇譚」で第15回電撃小説大賞(電撃文庫MAGAZINE賞)を受賞した鷹羽知さんの長編デビュー作。
吉原をモデルにしたファンタジー世界が舞台。和風ファンタジーですね。この世界の持つ雰囲気がなかなかよかったです。もっと吉原らしさを打ち出してもいいようには思えたのですが、それでも全体として必要なところはしっかりらしさを出しているようでした。まあ、電撃文庫では出しづらい部分もあることでしょう。
相次ぐ殺人事件を紅が解決するのか、あるいはどのように紅が絡んでいるのかと期待しながら読んだのですが、まったく予想していない方向に話が転がりました。予想外ではあったけれど、これはこれでなかなかおもしろかったです。紅の周囲にもクセのある人物が揃っていて、物語を盛り上げてくれました。
ただ、全体的に説明不足というか、もっと書き込んで深くしていくべき物語だった気がします。1冊でまとめるべきではなかったというか。特に後半は駆け足で進んでしまって、全体がぼやけてしまったようです。前半と後半では物語の雰囲気ががらりと変わるだけに、その部分こそ深く、そして詳しく書き込むべきではなかったのでしょうか。そのあたりが惜しまれます。
紅はくれなゐ (電撃文庫) | |
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