加納朋子『スペース』

　大晦日、おせち料理のおつかいでデパートへ出かけ、警備員のアルバイトをしていた瀬尾に再会した駒子。駒子は瀬尾の了解のもと、「ちょっと分量のある手紙」を彼に送りつけた。瀬尾からの答えは･･･

　シリーズの前作『魔法飛行 [ 加納朋子 ]』を読んだのは、文庫化された2000年のこと。実に今から9年も前です。当然かもしれませんが、内容はあまり覚えていません。ということで、これから『スペース [ 加納朋子 ]』を読まれる方は、『ななつのこ [ 加納朋子 ]』『魔法飛行 [ 加納朋子 ]』を読み返しておくことをオススメします。

　さて、本書は「スペース」「バック･スペース」の中編2作による構成。前者は入江駒子、後者は駒井まどかを語り手とするこの2作が表裏一体となり、おもしろい演出をしてくれます。
　「スペース」は収録された手紙部分が長く、その長さに若干退屈するかもしれません。もちろん、この物語は手紙に隠された謎を解き明かすという日常の謎に他なりません。その真相に驚くのとともに、この謎を持ち出した駒子の気持ちがなんとも切なく思われます。
　一方、「バック･スペース」はその裏側、ということで間違いないはず。「スペース」では見えなかったあちらこちらを違った角度から見せてくれます。すなわち「スペース」の解答編。きっちり『スペース [ 加納朋子 ]』の物語をまとめ上げるのとともに、時には後戻りすることで前に進めることを教えてくれます。

　ただ、不満があるとすれば一点、登場人物たちが行ったひとつの継続的な行為です。これによって傷つく人がきっといます。しかし、そのことに彼女たちが配慮しているようには見えないことが残念です。

　ともあれ、この不満にさえ目をつぶることができれば、上質でロマンチックなミステリであることは間違いありません。順番が逆になりましたが、『ななつのこ [ 加納朋子 ]』や『魔法飛行 [ 加納朋子 ]』を読み返したくなりました。きっとまた違ったものが見えてくるはず。

収録作：「スペース」「バック･スペース」
関連作：『ななつのこ』『魔法飛行』

2009年5月21日読了　【8点】

【感想拝見】

• コレ、いいかも☆さま（2009.11.04追加）

スペース (創元推理文庫)
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