大崎梢『スノーフレーク』

 「溶けない雪の欠片を見にいこう」そう約束したのに、幼なじみの速人は一家心中で死んでしまった。それから六年、まもなく高校を卒業し函館を発とうとする真乃は速人そっくりの青年を見かける。遺体が見つからなかった速人は生きているのかもしれない。真乃は心中事件を調べ始めた・・・


 なんとも切ない。
 遺体は見つからずとも、死んでしまったに違いない幼なじみ。速人のことになると、普段とは打って変わって積極的に、というか憑かれたかのように動き出す真乃の姿がなんとも切ないのです。死んだはずだけれど6年たってもあきらめきれない、ひょっとしたらと思ってしまうあたり。これがすべての源なんです


 一応ミステリなのですが、ミステリとして期待するとあまり楽しめないかもしれません。あまり意外性はないですし、あっさりした感じです。
 もっとも、この作品にはこの程度の薄味なミステリでちょうどいい気がしました。「青春ミステリ」という言葉の中では、あくまで「青春」という部分に光が当てられ、それが重要。その幻想的な雰囲気からも過度にミステリが強くなくてよかったと思います。
 読んでいるときには、小路幸也さんの『HEARTBEAT』と似た雰囲気を感じました。あの物語もずいぶん幻想的に感じたものです。
 ただ、最後になってああいうネタを使う必要があったのか、少々疑問に思います。真乃、亨、そして速人の関係を壊さないためなのでしょうが、そんなに軽々しく使われるべきネタではないような気がします。


 「大崎さんって、書店ものばかりじゃなくて、こういうのも書けるんだ」とその実力を見せてくれた一冊。もしかしたら、こういう作風のほうがあっているかもしれません。

2009年5月9日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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スノーフレーク
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