真名月由美『電脳幽戯 クワイエットボイス』
命懸けのネットゲーム「Foolish Children」。これに参加させられた都薙緋真は探偵業を営む鷺浦悠人に助けられ、他のマスターが操る屍鬼を退け続ける。制裁という名の下に襲撃を続けるマスター「社会人」が狙う次の標的は緋真だった・・・
悪人を殺すことは正義なのか? 悪なのか?
法によって裁かれない犯罪者に制裁を加えようとする私刑。その犯罪者によって害を被った者からすれば、それは当然の権利と錯覚するものかもしれません。
しかしながら、やはりそれは報復や復讐に他なりません。まして第三者による制裁なんて歪んだ正義そのものです。
では、そこに感情というフィルターがかかるとどうなるのでしょう。緋真のように「社会人」の行為が悪とは思えなくなるのでしょうか。
今回も緋真が屍鬼に襲われます。ただ、そのシーンからあまり怖さを感じられないのは残念。むしろ、屍鬼に襲わせる「社会人」の心の方が怖いですね。こちらの方が現実的で、リアルに感じられるからでしょうか。そのあたりは少し残念。ホラー的な味付けをしているのですから、もう少し期待したい部分です。
ところで、緋真が襲われたあの場所は、あの時間帯にあんな状況になるのでしょうか。もっと人がいたりとかしないのでしょうか。ちょっと疑問でした。
前作同様今作もテンポよく、読者をぐいぐいと引き込む文章は健在。新たな展開を予感させる締めくくりでしたが、緋真と鷺浦がどう対応していくのか、楽しみでなりません。高崎璃砂の存在が、どうにも怪しい気がしてならないのですが。
関連作:『電脳幽戯 ゴーストタッチ』
電脳幽戯 クワイエットボイス (講談社X文庫―ホワイトハート) | |
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